サンタクロース未満(2016/12/25のこと)
昨年のクリスマスに『Pay It Forward』をやってみた。
ずっと書こう書こうと思っていたが気づけばひと月過ぎてしまった。
書けなかった理由はただ一つ。結論が思いつかなかったら。笑。
『Pay It Forward』って何?と言う方は下の記事を。
簡単に言えば、カフェなどで多めに支払って、おつりは次の人のために使ってくださいとお願いする。『恩送り』や『先払い』と言ってもいいだろう。
クリスマスの日に寄ったカフェで事前に料金が支払われているなんて、なんて素敵なプレゼントだろう!!
そのアイディアに興奮した私はまずやってみようと思った。
どうせやるならかっこよく、スマートに。
では、スマートな『Pay It Forward』とは?と考えた。
この時点でもうすでにスマートでないのは目を瞑っていただきたい。
① 台詞
いざ、支払いを終えて『Pay It Forward』をお願いする際、なんと言えばスマートなのか。
パッと思いつくのは、
『あ、おつりは、次の人に使ってください』だ。
が、これではシンプルすぎてピンとこない店員さんがいぶかしがる可能性がある。(おそらく殆どの人は不審に思うに違いない)
かといって、おつりをもらう直前で、
『そういえば、アメリカでおつりを次の人のコーヒー代に充ててくださいっておごる行為がブームなんですって!私もやってみようかしらね。うん!そうね。そうするわ!お願い。』
なぜかおばちゃん口調になってしまったが、それほどスマートさとは程遠いというのは感じ取ってもらえるのではないだろうか。
なので、一番初めに挙げた台詞だけを告げ、店員さんが混乱した場合のみ説明を加えるという手法で望むことにした。
十中八九、店員さんが困るだろうが、何らかの奇跡を期待することにしよう。
② お店選び
幸い最寄の駅にはスタバがある。上の記事でも行われたのはスタバだし、スタバの店員さんはスマートな方が多い印象がある(勝手なイメージ)ので、第一候補。
しかし、自分の使う出口からは少し離れている。
クリスマスの日は朝から遠方に行く予定があったので、出来れば近いところがいい。
けれど、これらの店舗で先払いをした場合、断られる可能性が高いのではないかと踏んだ。
なぜならば、それらの店舗は会社っぽいイメージが先行してしまい『遊び』がないように感じる。
仮に先払いをお願いした場合、
『困ります』『店長を呼んできます』『ちょっとそういうことは会社的にNGなので』など言われるのではないかと想像してしまい、ちょっとやりづらい。
残るはスタバと同じシアトル系カフェのタリーズ。
上記のカフェに比べればまだ『遊び』があるような気がする。
もちろん完全な主観でしかない。困るかどうかはそのときの店員さん次第だろうが、ここは私のイメージのタリーズに賭けてみることにした。それほど、私の中のシアトル系は洗練されているイメージで占められている。
③ 金額
さて、次は幾ら払ったらスマートか?を考えてみた。
記事では先払いを連鎖させていくような感じだったのでコーヒ1杯分、500円くらいだ
ろうか?
が、今回の場合はあくまでも『クリスマスプレゼント』なので連鎖は考慮しなかった。
たとえば、シアトル系のカフェだと単価が高い。
当日、自分が飲みたいものが600円だったとする。
1000円で払った場合、400円の先払い。次のお客さんが700円のフラペチーノかなにかを頼んだ場合、300円の持ち出しが発生する。
当然、半額以上も知らない人に出してもらってるなんて戸惑いながらもうれしいことだろう。
けれど、そこにスマートさがあるかと言えば『ノー』だし、プレゼント感もない。
と言うことは、1000円だと足りない場合がある。
では、そこで、2000円だと仮定してみる。
けれど、この考えはすぐに打ち消された。
自分の支払いが600円なのに1000円2枚で支払う異常さをいくらシアトル系といえども認めてはくれまい。2000円札を持っていれば別だが、あいにく持ち合わせがなかった。
と、くれば、次は5000円札と言うことになる。
悪くないし、かなりの高額だ。しかも数人分の支払いが可能。
これでいい。これでいこう。
そう思ったのもつかの間、
『ケチって5000円札にした』という感がぬぐえない。
もちろん、何も知らない人からしたら
『たまたま』財布に5000円札しかなかったからそれで支払ったという『自然』な行為にしか見えないだろう。
しかし、私は自分の心を知っている。5000円札にした理由はケチったからだと。
これがクリスマスでなかったら、この金額は選択しなかったに違いない。
しかし、時はクリスマス。もしかしたら、相手のいない寂しいクリスマスを過ごす人がちょっとした温もりを求めてこのカフェにやってくるかもしれない。
そのドラマが今回は10000円札でいくという決意をプッシュした。
そして、クリスマス当日
その日は遠方でアースオーブンを作るイベントがあったので朝は比較的早かった。
飲んでいる時間はないのでタンブラーに入れてもらう事にした。
駅近くのカフェは7時にオープンするところも多く、タリーズも類にもれず、私が訪れる時間にはばっちしオープンしていた。
レジ前にお客はいないし、後ろからもすぐに誰かがくるということもなさそうなくらい閑散としていた。
レジに立つ店員さんは、大学生くらいの男の子。すらっと背の高い頭のよさそうな子なので私は安心した。(この子ならきっと…)
いつもはソイラテを飲むが、タンブラーに入れてもらうと洗うのが面倒そうなので、普通のコーヒーを注文する。
その時が近づく。
タンブラーにコーヒーを注いで戻ってくる店員さん。
『うん百えんになります』
すっと差し出す10000円札。
『10000円お預かりします。おつりが、、、、』
(来た!!いまだ!!)
「あ、おつりは良いです(ドキドキドキドキ)」
『へ?でもそれは。。。』
「次のお客さんの支払いに使ってください(ニッコリ)」
『え、でも、、、あ、』(と、奥にいる先輩に不安げなまなざしを送る)
ここで、先輩が出てくると断られるかもしれないと思い、
「じゃ、、、」
とそそくさと退散。
追ってくる気配(別に悪いことをしてるわけではないが、何より恥ずかしかった)はなかったので、おそらくそのまま先輩に相談しにいったのだろう。
その後、おつりがどう使われたのかは知らない。
支払った後の事はものすごく知りたかったし、なんなら、変装してお店に行って次の人がどんな反応をするか見たかった。
もしかすると、そのまま店員さんが懐に入れてしまったかもしれないし、落し物として処理してしまったかもしれない。
なんとなくツイッターで検索してみたが、特に該当するような呟きをしている人はいなかった。
良いことをしたような、そうでもないような。
結局自分はそのお金で人がどういう反応をするか見たかったのだと思った。
だから、その反応をみれないまま店を後にしてしまうことで、『対価』をもらっていないと感じもやもやしたのかもしれない。
しばらくの間、おつりの行方が気になって仕方なかった。確かめるつもりもないけれど、自分の執着の糸が切れていないなと感じていた。
別にもったいないことをしたと後悔しているわけではないし、勢いでよくわからないことをしてしまったと落ち込んでいるわけでもない。
ただ、まったく初めてのお金の使い方に戸惑いが隠せないだけなのだろう。
これが1000円なら、すぐに忘れてしまっただろうし、5000円でも良かったのかもしれない。自分の行動原理が楽しそうなことをするというのならそこから逸れた行為でもない。ただ、これじゃ、つながらない。続かない。
もし今年もやるとしたら、今度はお店に根回ししておこうか。
その上で、レジに一番近い席で何が起こるのかを見てみたい。
でも、次は2000円札を用意するようにしよう。